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【感想】奈良博の文化財保存修理所を見学できた

見学体験記 おでかけ

一般公開は年に一度の貴重チャンス

ごくまれに、ニュースなどで耳にする「文化財の保存修理」というワード。

そりゃあ、古いものだからメンテナンスは必要だろうなぁ。そんな程度の認識しかなかった自分ですが、年に一度の特別公開があると知り応募したところ運よく当選。何事も勉強と、見学させていただくことと相成りました。

奈良博の場合は、1月日に開催されました。募集は2カ月くらい前からだったような(曖昧)。公式サイトでお知らせとして記載されていました。希望する人は、こまめに情報を確認しておくといいかも。

結論から言うと、見て良かった。展示されている文化財に対する見方がちょっと深くなりました。そして、文化財を未来に引き継いでいくためには、職人的な技術が必要なのだなと実感。ふだんは注目されることのない裏方さんですが、未来に残る仕事って格好いい!

前半は講堂で文化財保存についての座学

一般公開について

会場は、正倉院展の会場入り口の左側。入るとホールになっています。一般の参加者は60人だとか。プレス関係らしき人が10名ほどでしょうか。

席について待っていると、前方の男性のスマホ画面が目に入りました。待ち受け画面が仏像です。さすが、気合の入りかたが違います。老若男女、さほど偏りない参加者構成。外国の方もいらっしゃいました。

一般公開を行う意図は、修理技術を公開することで広く理解を深めてもらうため。修理に必要な技術の継承のためには、まずその必要性を認めてもらわなければならないからですかね。

面白いと思ったのは、心理的な理由。仏像などは修理の過程で、バラバラに分解します。必要なこととはいえ、痛ましいと感じる人も出てきます。あまりおおっぴらに公開しないのも、確かにうなづけますね。

奈良に文化財保存修理所ができた理由

文化財保存修理所の一般公開は、2023年で13回目。毎年実施しているそうです。

奈良の文化財保護修理所は、国内で京都国立博物館についで、国内で2番目の設置。奈良のができる前は、文化財を京都まで運んで修理していたとか。

対象物は、土でできた塑像や能面、漆などのデリケートな素材ばかり。経年劣化もあり、運搬でかかるダメージは無視できません。という訳で、地元奈良で安全に修復作業をすべく設置されたということです。東日本大震災で流されたお面を複製したこともあるとか。東北出身ですが、初耳。感謝。

工房はすべて地下にあり、普段は一般の人は入れません。存在自体を知らない人も多いでしょう。実際、私もまったく知りませんでした。

修理寄託の流れ

  • 所蔵者
    修理寄託
  • 奈良博
    修理運営・監督
  • 文化財保存修理所各工房
    修理作業

仏像などの修理について

いくつかの例をスライドを使って説明。

「聖徳太子像」をは購入当初、黒く塗られていた。彩色を落とすことで本来の姿に近づくのではないかと考え、作業開始。綿棒に蒸留水を浸して丁寧にクリーニング。

この時、腕だけを解体。すべてバラしてしまうと、戻した時に継ぎ目の部分の色が変わってしまうことを避けるため。大原則は「現状維持」。

解体時に鉱物が一粒包まれた和紙が出てきたとか。仏舎利に見立てているのではというお話。修理での発見もあるのですね。

二十八部衆の毘沙門の修理は足先。過去の修理の際の接着剤を取り去り、継ぎ目が目立たないように古色を筆でつけていく。新しく足す部分はいきなり欅でつくるのではない。バルサ剤で仮に作り検討する。作業する人と奈良博が協議しながら作業を進めていく。

奈良博に行くたび圧倒される、「金峯山寺の金剛力士像」。昭年40年代に現地で修理されている。今回は解体し、木箱に収めて運んできた。屋外に700年さらされていたので劣化している。木の継ぎ目のかすがいが腐食しているので交換。

足元に湿気がたまりやすく傷みがひどい。シロアリ被害もあり、スポンジ状になっていた。樹脂を注入し強化を図った。

大きさ日本一が東大寺ので、2位がこの金剛力士像なんですって。日本1位2位が奈良にあるってすごいな。

絵画・書籍・漆の修理について

専門用語が多いので難しかったのですが、ざっくりと。

絵画や書籍、古文書は絹や紙を主体としているので、保護・継承していくには定期的な修理が必要。デリケートなものばかりなので、破壊することがないよう材質や構造を理解したうえで適切な工法と安全な素材で修理することが求められる。

大切なことは、100年後の未来の人が再修理できるようにしておくこと。

実際の修理の現場を間近で見学

階段を下りて、ガラス張りの各工房の前に銘々陣取って作業の様子を見守ります。地下ですが、太陽光が差し込み明るく開放的な空間です。

写真撮影禁止なので、じっくりと自分の目で見てきました。

彫刻室・金工室・木工室

木造・乾漆造り・塑造・銅造・鉄造などの仏像を中心とした彫刻や、天蓋・神輿などの大型工芸品の修理を行います。

(文化財保存修理所パンフレットより引用)

仏像のまわりに足場が組んであり、解体されているものも、ふだん目にしない形の仏像だけに、見ていいものかどうか、いささかドキドキします。

解体された仏像を前に、腕組みをしてじっと考えているスタッフさんが印象的でした。庭師さんが配置を考えるとき熟慮する感じ。職人ぽい。作務衣お召しの方もいましたね。

測量に使うのか、レーザーポインターのようなものもあったり。

装こう室

若い方、女性も多かったです。特に細かな作業だからなのでしょうか。絵が汚れないように、手袋的なものをはめていて、イラストレーターや漫画家と共通するんだなと変なところで感心しました。

入り口を入ったところに、粘着テープやほこり取りのようなものも見えました。エアコンに布カバーがしてあったり、サーキュレーターが回っていたり。なるほど。

和紙の文化財?修復の過程なのか、積み重ねた和紙にダンベルで重しがしてありました。使い勝手がいいのかな。シュール。

掛け軸・巻子・屏風・冊子などの形態をもち、伝統的な手法により紙や絹に書かれた絵画・古文書・経巻など書跡の修理を行います。修理に適した補修紙の製作も行います。

(文化財保存修理所パンフレットより引用)

漆工室

こじんまりとしたスペース。作業用?シンクには何かの溶剤。電気ケトルとマグカップもあり、研究室っぽさも醸し出されています。

乾燥に弱い漆だけに、加湿器も完備。居心地よさそう。

蒔絵、螺鈿といった技法が用いられた箱・馬具など、様々な漆工品の修理を行います。

(文化財保存修理所パンフレットより引用)

修理された文化財を後日見に行った

特別展示として、「新たに修理された文化財」なるものが後日あるとのこと。

せっかく修復の現場を見せてもらったのだから、これは行かなければ。ということで、用事のついでに20分で見学。

確かに、修復の説明をしてもらった「聖徳太子絵伝」がありました。そして、足先を修理したという毘沙門天も。

あそこがああなって、なるほど、と一人悦にいっていました。絵画も裏打ち?を貼り換えたのかしらとか、今までよりちょっとだけ深く鑑賞できるようになったかな。

歴史でもなんでもそうですが、手をかけて守ろうという意識がないと残っていかないんですね。100年先にバトンを渡す仕事って、誇りに思えますよね。

注:文化財や美術に関して、専門知識のない一般人の感想です。間違い、不正確な記述があるかもしれません。正確な情報については、奈良国立博物館でご確認ください。

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